緑内障とは
眼球も、ボールのように内側から一定の圧がかからないとしぼんでしまい、形が保てません。
この圧を眼圧と呼び、眼圧が一定に保たれているために、体を動かしても目の形は変わらず、物をしっかりと見ることができます。
一方、眼球後方の視神経は繊細で、耐えられない眼圧で容易に傷つきます。
視神経が傷つくと、神経の数が減って、その部分が見えなくなります。
この状態を緑内障と呼んでいます。残念ながら、減った神経は元に戻りませんので、治療がうまくいかなければ、段々視野がかけていくことになります。
緑内障では、早期に発見して、早期に治療しなければ、生活に支障のある見え方になります。
放置しておくと、病気の進行を止められず、ついには失明に至ることもある怖い疾患なのです。
有病率も高く、緑内障は我が国で糖尿病網膜症についで失明原因の2位に挙げられています。
より詳しい情報は 緑内障診療ガイドライン、日本眼科医会のホームページまで
緑内障の分類
目の前の部分は、房水という透明な液体で満たされています。
房水は、水晶体などに栄養や酸素を運び、またいらなくなったものを目の外に出す働きをしています。
眼圧を調整しているのは、房水の排出部(隅角)の奥の網の目のような部分(線維柱帯)です。
いろいろな原因で房水の流れが悪くなると、目の中に水が溜まり、眼圧が高くなります。
緑内障は水の流れが悪くなる理由によって大きく以下の2つに分けられています。
開放隅角緑内障
隅角は広く、その先の線維柱帯が目づまりをおこしたもの。
隅角は開いているが、線維柱帯の抵抗が高い。
閉塞隅角緑内障
隅角が塞がり、房水が線維柱帯に届きにくくなっているもの。
瞳孔縁で房水が流れにくくなり、その結果、隅角が閉鎖している
緑内障の症状
多くの緑内障は、10~15年という長い時間をかけて、ゆっくり進行していきます。
そのため、初期~中期はほとんどの方は自覚症状がありません。
眼圧がかなり高い場合には羞明(まぶしさ)、虹視症(光などに虹がかかって見える)、眼の痛みや頭痛・吐き気などが起こることがあります。
進行すると視野が大きく欠けて、見える範囲が狭くなったことが自覚します。
さらに進行して中心の視野が障害されると視力も落ちてきます。
緑内障の検査
視力検査
視力に影響が出てないか調べます。
眼圧検査
眼圧が無治療の時よりも下がっているか(治療の効果が出ているか)を調べます。
非接触型の眼圧計は、呼吸や脈拍の影響があるため、接触型の眼圧計の値も重要です。
視野検査
視野がどの程度障害されているか(進行していないか)を調べます。
視野検査には、動的視野検査と静的視野検査があります。
ハンフリー静的視野検査
隅角検査
先天性、続発性かどうか、隅角の広さ、色素沈着の状態、癒着の有無、新生血管の有無などを調べます。
眼底検査
視神経乳頭の陥凹拡大、辺縁の厚み、視神経線維束の欠損の有無、辺縁出血などを調べます。
典型的な緑内障性の視神経乳頭乳頭陥凹拡大、左下の視神経線維束の欠損などが認められる
緑内障早期診断のための新しい検査機器(当院で実施可能です)
視野検査
FDT(frequency doubling technology)スクリーナー
視細胞の中の比較的大型のM細胞系は、大型で、視野全体に広がり、かつ緑内障で早期に傷害されると考えられています。
M細胞系は、時間周波数で変化するものに敏感に反応するため、FDTスクリーナーでその異常を検出することができます。
視野に異常が出ていない、早期の緑内障も見つかることがあります。
SWAT
Blue on yellow、色視野とも呼ばれ、緑内障で早期に傷害される短波長に関与するK細胞系の異常を見つけます。
少し時間がかかるため、若い人に適します。
網膜厚測定検査
Cirrus OCT(Zeiss社製)によって、眼科光学検査機器では不可能とされた生体下における網膜厚を非接触、非侵襲的に捉え5ミクロンの高解像度で抽出します。
右下のように網膜の厚みを平面的に測り、視神経線維束の欠損(赤色の部分)をいち早く検出します。
緑内障の早期発見、経過観察及び定量的評価に非常に有用です。
ハンフリー静的視野検査
共焦点走査式レーザー検眼鏡
Nidek社F-10を用い、グリーンレーザーによる眼底合成像を作成することによって、従来の検眼鏡で分からなかった神経線維束欠損を描出することが出来ます。
UBMによる隅角検査
超音波生体顕微鏡(UBM)の登場により、緑内障前眼部の画像診断は大きく前進し,これまでの光学的手法では観察できなかった虹彩裏面や毛様体所見も鮮明に描出できるようになりました。
閉塞隅角緑内障、先天緑内障、水晶体脱臼などの続発緑内障に対する診断に非常に有用です。
緑内障早期診断のための新しい検査機器(当院で実施可能です)
眼圧を下げて進行を予防することが目的です。
点眼
現在、数種類の系統の薬剤があります。1~複数を使用しますが、それぞれに副作用が起こりますので、必要最小限を使用します。
点眼回数が少なく、効果的な薬も開発されています。
内服・点滴(注射)
副作用が生じる場合が多いので、通常は短期間の使用に留めます。
レーザー治療
緑内障のタイプによって行う場合があります。
レーザー虹彩切開術
急性緑内障の場合や薬物療法で眼圧コントロールが不十分な場合、レーザー治療を行うことがあります。
閉塞隅角緑内障では、瞳孔などで房水が隅角に流れていかないため、レーザーを虹彩にあけて、水の通り道を作ります。
レーザー線維柱帯形成術
開放隅角緑内障では、房水流出の抵抗が高い線維柱帯にレーザーをあてて房水の流出を促進します。
どちらも比較的安全で痛みもなく、入院の必要もありません。
緑内障の手術
薬やレーザーで十分に眼圧が下がらない、視野が進行するなどの場合に行います。
現在の主流は線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)と呼ばれる方法で、ほとんどの場合に特殊な薬(マイトマイシンC)を使用し、効果が長続きするようにします。
線維柱帯切除術
線維柱帯切開術
シュレム管にトラベクロトームという細い針金状の器具を挿入し、線維柱帯を切開します。先天緑内障、偽落屑緑内障などに有効です。
最後に
緑内障は、進行しやすく、失明につながる疾患です。そのため、多くの方が、不安、恐怖を感じ、そのために生活に支障が出ることがあります。
しかし、薬剤や手術など治療法が進歩し、初診時によほど進行していたり、若年発症でなければ、失明することは非常に稀になって来ました。
定期的な観察は重要ですが、不必要なまで不安を感じたり、不安のために受診が途切れるなどがないようにすることが大切です。
緑内障などの慢性の疾患では、病気をよく知ること、お互いを信頼することなどを心がけ、うまく病気と付き合っていきましょう。