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文字や顔を見るとき、無意識に目を動かして中心で見ようとしますが、その理由は、網膜では、中心部とそれ以外の場所の視力が大きく異なることによります。
網膜の中心部には、約1.5~2.0mmの濃い黄色い部分があり、その部分を黄斑部と呼びます。
黄斑部には、視力や色覚に重要な錐体細胞が集まっており、光をよく透すために中心部が凹んでいます(中心窩)。
網膜の前には硝子体と呼ばれる寒天様の物資があり、加齢などにより変性すると、黄斑部を前方に引っ張りやすくなります。
黄斑部は、その牽引で中心窩の凹みが分かりにくくなったり、ついには穴が開いたりすることがあります。
黄斑部に穴が開くことを黄斑円孔といいます。
視力が非常に鋭敏な場所なので、黄斑円孔になると、視力が極端に落ちたり、物が歪んで見えたりします。
黄斑円孔は、5-60代女性、高度近視などに多く、5~10%程度は両眼性といわれています。
黄斑円孔の治療は、多くは硝子体手術しかありません。
実際には、強膜に小さな穴(23Gシステムで行うため、多くは縫合不要です)を3箇所あけ、そこから眼球保持のための灌流、観察のための照明(内視鏡)、硝子体の切除、吸引を行います。
円孔の牽引を完全に解除し、円孔を閉鎖させるために眼内にガスを注入して網膜を固定します。
ガスで網膜の穴を正確に押さえるため、円孔が閉じるまで術後1(~2)週間は入院の上、うつむきの姿勢で安静をとってもらいます。
また、術後には白内障がほぼ必発のため、当院では45歳以上では白内障手術も同時に行います。
黄斑円孔は、1990年まで有効な治療法がありませんでしたが、現在は一回の手術で95%以上の円孔が閉鎖し、視力もかなり回復するようになりました。
若年者、術前視力がよい例、発症期間の短い例では、視力がより改善しやすいようです。
最近では7~8割程度まで不自由がない視力を回復するようになりました。